日本AS友の会の井上久事務局長が会長を務めた第11回日本研究会 学術集会は、平成13年10月27日、東京のホテル・フォーシーズンズの 会議場、アンフィシアターに全国から専門医が集まって盛大に開催 されました。 会長が患者会の代表でもあるため、これまでにない臨床的・実践的な 雰囲気の学会となりました。基礎医学的研究発表や症例報告に続いて、 井上久事務局長が基調講演として「我が国における強直性脊椎炎患者の 実態」と題して、第2回の患者アンケート調査の結果発表と、発症から 診断まで平均10年という強直性脊椎炎の診療に大切な「早期診断法」に ついて発表し、その後、我が国の専門医4人が壇上に上がって、 「血清反応陰性脊椎関節炎の日常診療の実際」と題して、日常診療で、 本疾患の診断、検査、治療、インフォムドコンセントなどを実際に どう行って行ったらよいか活発な意見が交わされました。 プログラム 〔一般演題1〕 座長 松本 美富士
〔一般演題2〕 座長 斉藤 輝信
〔特別講演〕 座長 井上 久 「ゲノム解析による骨・関節疾患の遺伝的要因の解明」 理化学研究所・遺伝子多型研究センター 池川 志郎 〔一般演題3〕 座長 立石 博臣
〔シンポジウム〕 「血清反応陰性脊椎関節炎の日常診療の実際」 座長 井上 久 基調講演 「我が国における強直性脊椎炎患者の実態」 順天堂大学整形外科 井上 久 シンポジスト
豊川市民病院 内科 松本 美富士 今回の学術集会の様子は、井上事務局長の整形外科学の恩師、 山内裕雄 名誉教授による順天堂大学整形外科の同門会員宛の 私信上の記事に集約されていますので、転載します。 10月27日(土)には、井上久君が会長で第11回日本AS研究会が フォーシンズンズホテルで開催されました。教室の諸君が学会開催に 協力してくれていました。AS患者でもあり、患者会である 「日本AS友の会」の事務局長でもある井上君は、彼が年来考えていた 通りの学会を運営しました。最後の基調講演では「我が国における 強直性脊椎炎患者の実態」を友の会会員のアンケートをもとに報告し、 続いて座長としてASの臨床についてのシンポジウムを取り仕切りました。 いささか座長がしゃべりすぎるきらいはありましたが、ASと 診断されるのに紆余曲折を経ている人たちが多すぎる、腰痛患者の 診察をする場合に、医師の頭の片隅に必ずASをおいて欲しい…… というのがメッセージでした。私は、米国で連中が比較的容易にASと 骨Paget病を診断するのを見てきて、若い男性で周期的に強い腰痛があり、 赤沈が高い場合にはASを考えるのがクセになっていましたので、 井上君がAS診を始める前から、わりとASをよく発見していました。 うちの連中には、いまさらでもありましょうが、腰痛診察の場合には ASを必ず念頭においておくこと。 会長招宴では、「井上久君をこの会の理事にお加え下さり、今回は 会長まで努めさせていただき、まことにありがとうございました。 彼は中学・高校時代には器械体操の選手で、海外遠征にも行った経験も あり、医局の歓迎会では舞台の上で逆立ちで一周するという芸を披露した ほどの男でしたが、そのうちにASが発症し、苦難の道を歩きました。 一時は疼痛が極めて強く、高度の後弯変形に発展する可能性があった ために、私がHarrington rodを入れて固定せざるを得なかったくらい でした。人工股関節手術も受けています。しかし、現在ではASを一生の 仕事にしてがんばっています。今後ともよろしくお願いします」と 挨拶しました。わたしは、彼には気の毒であてったが、天命と思って がんばれと常々言ってきました。それが今回のこういう形に実を結んだ のは実に素晴らしいことと思います。久よ、そして教室の諸君よ、 ご苦労さま。これからもご精進下さい。 特別講演に、東大整形外科教室員であったが、現在は基礎医学に徹し、 理化学研究所・遺伝子多型研究センター・変形性膝関節症関連遺伝子 チームにいる池川志郎氏(昭和58年 東大卒)が、「ゲノム解析による 骨・関節疾患の遺伝的要因の解明」という最前線の話をわかりやすく 解説してくれました。彼自身も血清反応陰性脊椎関節炎での一つである 乾癬性関節炎の患者とのことです。現在の遺伝学の進歩はじつに 素晴らしいものです。これがどのような形で治療に結びつくのか、 大いに期待されます。 |